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会長あいさつ 「奨学金返還免除による「教職の高度化」の劇的推進」

 教員就職者への奨学金の返還免除について、自民党や公明党が導入を提言し、骨太方針2023に早急な検討が明記されたことから、中教審教員養成部会でその具現化についての審議が進められ、本日3月19日に審議のまとめ案が出されました。それは次のような内容です。

〇学校教育が高度化・複雑化しており、教員にますます高度な能力が求められることから、教職の高度化を早急に推進する必要がある。

〇そのために、大学院で高度な学修を行って教職に就く者の奨学金を返還免除する。

〇教職大学院と学校での実習を必修とする修士課程の修了者を対象とする。

〇現行の日本学生支援機構第一種奨学金の「特に優れた業績による返還免除制度」を活用する。

〇令和6年度の教員採用試験合格者(令和7年度就職者)から適用する。

 日本教職大学院協会は、昨年9月29日に文科省に対して、質の高い教員の確保のために教職大学院修了レベルを教員の標準とすること、そのために教職大学院学生への奨学金返還支援を行うこと、学部から教職大学院を経て学校現場に奉職する者について返還免除することを要望しておりました。私も、昨年12月26日の教員養成部会において、同じような趣旨の意見表明を行いました。我々の要望が実現しそうです。

 教職大学院を修了して教員に就職する者の奨学金の返還を免除することは、教職大学院入学者を劇的に増やす効果が見込まれます。日本学生支援機構の第一種奨学金の最高月額は88,000円(年間貸与額は1,056,000円)であり、学部卒業者や民間企業等の社会人の教職大学院入学への大きなインセンティブになります。

 現在は教員不足が深刻な状況ですが、今後は確実に教員採用数は減少します。文科省の小中学校教員採用数の見通しによれば、2024年度の26,348人が2030年度には17,778人となり、今後5、6年で実に33%も減少します。教員採用数が減るということは、大学院を含めた教員養成(養成期間の長期化)が行いやすくなることでもあります。学部での教員養成に主眼を置いてきた私立大学の中で、教員養成の継続と高度化に「本気度の高い」大学が、教職大学院設置に乗り出してくることが想定されます。

 すなわち、奨学金返還免除によって教職大学院入学者が増えることにより、教職大学院が増設・拡充され、教員養成が学部主体から大学院主体に移ることになります。

 大学院修了者が多数を占めるようになれば、大学院レベルの知識やスキルが教員の資質・能力の事実上の標準となります。そのことにより、教職が高度専門職であることが広く認知されるとともに、教員の社会的地位が向上します。そして、教職の魅力が向上し、質の高い人材を教職に惹きつけるという好循環が生まれることが期待されます。

 審議まとめ案では学部から教員就職する者の返還支援については引き続き検討するとしていますが、先ずは、学部から教職大学院に進学して教員就職した者の、学部時の奨学金の返還免除を行うべきです。教職大学院進学のより強力なインセンティブとなり、教員養成の高度化がさらに進むことになります。

 現職教員の入学者については、任命権者の教育委員会が教職の高度化の必要性を認識共有し、大学院派遣や入学・授業料支援を充実することを提言しています。今後、国として実効性あるさらなる具体策に踏み込むことを期待します。

 教職大学院に追い風が吹いてきました。教職大学院数と学生数の拡大が予想されますが、その前提となるのが質的充実です。量的に拡大しても、質が担保されなければ意味がありません。そのための新たな取組が求められるであろうことを心しておくべきです。

2024年3月19日       

日本教職大学院協会     
会長 加治佐 哲也   

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