この度、加治佐哲也先生の後任として、日本教職大学院協会・会長に就任致しました兵庫教育大学長の森山潤です。どうぞ宜しくお願い致します。
令和6年12月25日に文部科学大臣より中央教育審議会に対して、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について諮問がなされました。具体的な検討事項は次の三点です。第一に、社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方、第二に、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方、第三に、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職に参入しやすくなるような制度の在り方についてです。
教員養成・教員免許改革の諮問では、これまで進められてきた質の高い教職員集団の形成を一層加速するための方策が複数提示されました。特に注目すべき点として、大学院での学修のみで教員免許を取得できる仕組みの検討が挙げられます。現在の制度では、学部の教職課程を履修しなければ教員免許を取得できないため、多くの大学では、教員免許を持たない大学院生が学部の教職課程を履修できるよう特別プログラムを設けています。新たな仕組みでは、大学院に教職課程を整備し、学部の科目を履修しなくても教員免許を取得できるようにするということです。
この中で、教職大学院については、①学部と教職大学院との連携・接続の強化・実質化、②教職大学院の学びを生かしたキャリアパスの確立、の2点が総論として方向性が示されました。特に、①では、教職大学院進学希望者対象コースの設定、先取り履修を踏まえた教職大学院の在学年限の短縮が挙げられています。これに加えて、学部教育での教職課程の在り方、多様な人材を教職へと誘う方策、教員免許自体の在り方など、教職大学院の在り方と大きく関わる論点がずらりと示されています。
現在、学校現場での教員不足の問題は極めて深刻です。また、デジタル学習基盤の活用などに代表されるよう、現職の教員自身が新しい教育改革の方向性に向けて自分自身をアップデートしていかなければなりません。これには、量的な人材供給不足の解消と、質的な専門性の向上という二つの問題に同時に対応しなければなりません。現状は、教員の量的不足が業務量のひっ迫をもたらし、質的向上の余裕を生み出しにくいという悪循環に陥っているように思われます。
この悪循環を断ち切り、量・質ともに好循環を生み出していく上で、教職大学院が果たす役割は、極めて大きいと思います。教員の養成・採用・研修の一体的な推進の中で、学部教育と学校現場をつなぐ教職大学院は、教員養成の高度化を中核的に担う存在です。そして、前述した好循環を生み出すためには、教職大学院入学者の実情を踏まえた教職大学院での学修の多層化、個別最適化が求められます。
日本教職大学院協会では、これまでの各専門委員会等での研究成果を踏まえつつ、中央教育審議会での議論に対して時機を得た提言が発信できるよう、未来志向の取り組みを進めてまいりたいと思います。
皆様のお力添えのほど、どうぞ宜しくお願い致します。
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